こんばんは、イコッサです。
バージョン5が始まった今ですが、あえてバージョン3についての振り返りを行ってみます。
バージョン3は竜族の物語であり、その指導者が総教主オルストフでした。
このオルストフは竜族の種族神ナドラガの一部もしくは、分身とも言える存在です。
神話の時代、大いなる闇の根源との戦いで主神である女神ルティアナを失った種族神のうち、6人は各種族の調和によって平和を築こうという道を選択しました。
しかし、竜族の神ナドラガは長兄である自分こそがルティアナの後継者であり、その自分の生み出した竜族が他の6種族を支配することを企みます。
強い竜族が弱い6種族を支配し、守る。
これが本心ならいいですが、この直前のセリフで『地上の民は薄汚く小賢い』とか言っているので、ナドラガは本心がとても分かりやすい神ですね。
この弱肉強食こそ心理という考え、魔界のバルディスタ要塞の魔王ヴァレリアも同じことを言っていました。
その後、調和による平和を求める6種族神と、独裁による平和を求めるナドラガは種族達も巻き込んだ戦いになります。
上のセリフの通り、ナドラガは魔族と考え方が近いので、母ルティアナを殺害した大いなる闇の根源と契約を交わしました。
闇の根源にとっては操りやすい相手だったでしょうね
ナドラガが最初に狙ったのが末っ子で女神ルティアナから愛されていたとされるグランゼニスでした。
この行動を見るとナドラガは『俺が先に生まれた長男だから偉い』とか『俺が会社の先輩だから偉い』とか言っちゃう痛い人という感じですね。
長く続いた戦争ですが、最後はナドラガが封印されて結末を迎えました。
この時、封印を解くという使命を与えて生み出されたナドラガの分身がオルストフとなっています。
オルストフは100%神そのものであるナドラガと違い、体は竜族です。
浮遊大陸ナドラガンドが奈落の門の先に封印されて以降、苦しい生活をする竜族の側で共に歩んできました。
私か今回注目したいのは、オルストフが竜族に抱いているイメージが、本体であるナドラガとまるで違うという事です。
ナドラガが竜族をどう捉えているかは非常にわかりやすいですよね。
女神ルティアナの長男である自分は種族神で最も優れており、他の6人の種族神からは尊敬されて当然、支配して当然…という考えが前提にあります。
なので、ナドラガが作った竜族も他の6種族神が作った人間やオーガに比べて優れていて当然、支配者となるのは当然という考えを持っています。
ナドラガは竜族を愛してはいるんですが…それは自己愛や、自分の作品を愛する気持ちに近い気がします。
こういうタイプは自分の理想を子供に押し付けてくるので、子供が自分の理想通りの評価を得られないと癇癪を起こします。
学校に怒鳴り込んでくるモンスターペアレントはこれですね。
子供を自分の優秀さをアピールするための道具か何かと思っているという…愛は愛でも独善的な愛を持っています。
歪んではいますが、ナドラガは竜族が優秀で他の種族を支配するべき高潔な存在だと思っているようですね。
しかし、オルストフの竜族に対する考え方は全然違います。
オルストフは竜族を『自分で行動を起こさずに他人の力を頼るだけの種族』と評価しています。
そして竜族は自分達を救うことができない生き物だとまで言い切ります。
どうして同一人物と言ってもいいナドラガとオルストフはここまで考え方が違うのか・・・?
それが今回の記事のテーマになります。
オルストフの歩んだ道
オルストフはナドラガ封印の際に生み出され、それからずっとナドラガンドで生きてきました。
ナドラガンドがアストルティアと切り離されたのは6000年前のゴフェル計画からさらに数千年前になるので、オルストフは長い期間竜族を間近で見てきました。
それに対してナドラガは封印された状態なので、ナドラガンドに閉じ込められ、苦しむ竜族達の生活を見ていません。
まだナドラガが封印される前の神話時代でも、同じ人間(竜族)としてナドラガに接した竜族はいなかったでしょう。
神と竜族という関係でしか物事を見ていなかったナドラガに対し、人の身を持って生まれたオルストフは同じ竜族の目線から世界を見ていたのです。
オルストフは竜族のリアルを見ていたんだね
そして彼が下した竜族の評価が『他人に縋ってばかりの種族』なのですから、オルストフの考えはとても複雑です。
本体のナドラガは血統主義・差別主義と単純なのにね!
竜族は他人任せの種族?
オルストフの言うように、竜族は本当に他人任せの種族なんでしょうか?
まずは神話の時代から振り返ってみましょう。
ナドラガが6種族神に戦いを挑んだ際、竜族達はナドラガに続き6種族と戦っていますね。
普通なら、最近まで一緒に大いなる闇の根源と戦っていた戦友とも言える6種族を攻撃なんてできない気がします。
しかも使える神であるナドラガが主神ルティアナを殺害した大いなる闇の根源と契約するという異常事態です。
いくらナドラガが独裁者気質と言えど、ここまで暴走している主についていくのは、竜族には主体性がないと言われても仕方がない
苦悩の果てにナドラガについていくことを決めた…とかじゃないようです。
割とノリノリで人間と戦っている様子がうかがえますね。
言葉からも竜族以外を下に見るような雰囲気が感じられ、神話時代の竜族は考え方までナドラガに似ているようです。
明らかにおかしな行動を取っているとは言え、神には逆らえなかったのかな?
エステラの裏切りに怒り狂うナドラガを見るに、神話時代はどんなに奇妙な行動をとっても裏切り者の竜族はいなかったようですね。
100歩譲って神であるナドラガが直接統治していた神話時代は仕方ないとしても、ナドラガンド大陸が5つに分割された後の竜族はどうだったのでしょうか?
オルストフはナドラガ教団を作り『解放者が現れ、5つの領界を繋くことでナドラガが復活し、竜族が救われる』と広めました。
しかし、実際はこの条件は1つ1つが独立していますね。
5つの領界をつなげれば竜族の生活は改善するはずです。
例えば氷の領界の氷と、炎の領界の炎を使えば水資源は確保できそうですし、その水をさらに利用すれば食料を増やせそうですね。
そして、5つの領界を繋ぐ役割は必ずしも解放者でなくてもいいのです。
各領界に立てられた5つの塔ですが、アストルティアに行かなければクリアできない仕掛けの塔もあれば、そうでない塔もありましたね。
つまり、5つある塔のいくつかは竜族でも踏破できたという事になります。
例えば聖鳥に消えない炎をもらえばいい炎の塔や、特に条件のない嵐の塔や水の塔は竜族の力でもクリアできた
種族神達(特にワギとエルドナ)や神獣は竜族に重すぎる罰を与えたことを後悔しているので、私達冒険者とは別の方法で女神の円盤を手に入れられたかもしれません。
難しいものがあれば、最悪は塔を破壊するとか、塔の仕掛けを何とか素通りして塔の番人から無理やり女神の円盤を奪う事もできそうです。
嵐の塔ではトビアスが試練を無視して円盤を手に入れてたよね。
これが『できるか、できないか』ではなくて『やろうともしない』様子を見てオルストフは竜族に失望したんだと思います。
解放者が必要な最大の理由は5つの領界を繋ぐことではなく、創生の霊核に封印されたナドラガの心臓を取り戻すのに必要だからです。
ナドラガの心臓は6人の種族神の封印で守られていますので、この6人の種族神の力を消耗させなくてはいけません。
そこで取られた作戦が、種族神を身に宿すことができる神の器(アンルシアやマイユ)全員と友好関係にある主人公を殺すことでした。
神の器たちは主人公を生き返らせるために種族神の力を使い、種族神が消耗したところでナドラガの心臓の封印を破るという作戦なのです。
周りくどいですが、神々が施した封印なので、竜族の身であるオルストフにはこの方法しかなかったと思われます。
最初にアンテロに誘拐されたヒューザあたりを痛めつけて、種族神マリーヌが降りてこなかったのでしょうね。
計画を変更したのはバージョン3.0から3.1の間と考えるのがよさそうです。
解放者というのは竜族(の神)を解放するための生贄だったんだね
オルストフが手に入れた愛とは
オルストフはナドラガ復活の目的のために『解放者が竜族を救う』と広めました。
逆に言うと解放者が現れる前は竜族が自分で自分を救うということができない・・・とも取れますよね。
オルストフの使命で言えば、解放者や神の器がいない状態で5つの領界を繋いでもナドラガが復活しない以上、やる意味がないわけです。
ただ、長い時を竜族を過ごしていたオルストフには別の思惑があったと思います。
それは『どうして竜族が自分自身の手で竜族を救うという発想に至らないのか?』という苛立ちではないでしょうか。
自分で解放者がいないと駄目だと広めておいて、何の疑問も持たず素直に従う竜族に苛立つのは理不尽ですか?
そういった複雑なオルストフの心中を察するために、ここからは私の妄想も入りますが、どうか耐えてください。
あまりに長い間竜族と暮らしていたオルストフは竜族に愛を感じていました。
ナドラガが持つ、神である自分の創作物もしくは所有物としての竜族を愛する自己愛とは別種類の愛です。
エステラやトビアスや、作中出てきていない数多くの竜族の子供を育てた経験が、オルストフの中に親としての愛情を作っていったと思います。
子供に絵本を読み聞かせるとか、その絵本の結末は竜族が平和に過せるようになるとか、普段は隠れている親としてのオルストフの願いが透けて見えます。
もしナドラガと同じ願いをオルストフが持っているとしたら、エステラ達に読み聞かせる本は悪者(アストルティア)と戦い勝利するという内容だったはずです。
エジャルナの民家にあるドラゴンウォリアーという絵本がまさに『悪役の女神ルティアナと6種族神を竜族が倒し世界を救う』という物語ですね。
ドラゴンウォリアーはナドラガの代弁者としてのオルストフが作った物語、それに対してエステラ達に読み聞かせた物語はひとりの親としてのオルストフ本人の望みだったと思われる
オルストフが持った愛とは、子供の失敗や反抗も含めて丸ごと愛するという親の愛であり、いつか親を越えていってほしいと考えるような深さがあります。
神であるナドラガには理解できないでしょうが、多くの竜族の家族を間近で見て、自分で何人もの子を育てたオルストフにはそれがわかったハズです。
しかし、種族全体で見ればナドラガから親離れできない竜族を、オルストフがどう思っていたかは以下の通りです。
ナドラガが子離れできない親なら、竜族もまた親離れできない子供であったということですね。
オルストフはナドラガを復活させるためだけに生まれ、竜族と共に長い時を生きて親としての愛を持ちながらも、自立しない竜族に失望し、だからと言って希望も捨てられないという・・・。
私なんかの表現力じゃオルストフの複雑な思いが伝えにくい
主人公がナドラガを倒す時、6種族の神々が現れてナドラガを諭します。
世界の一部となり、子らの行く末を見守ろう。
独り立ちできない竜族を数千年にわたって見てきたオルストフにとっては、この6種族神の声を聴いて思ったはずです。
自分も竜族が独り立ちする様子を見守りたかったと。
きっと誰よりそれを願っていたのはオルストフなんだよね。立場上、真逆のことをやったけど。
生まれた目的がナドラガの復活なので表立ってそうは言えませんが、その後の展開からもオルストフの意志が垣間見れます。
まずは敗れたナドラガですが、自棄になって竜族を含むすべてを滅ぼそうとします。
これはナドラガに同居している大いなる闇の根源の意志が関係していると思われます。もしくは本当に自棄になっただけかもしれません。
このあと断罪の剣に斬られ、ついにナドラガは死亡しました。
しかし、その身に貯めこんだ魔瘴が一気に放出され、主人公たちは魔瘴で包まれた空間に閉じ込められてしまいます。
そこを助けてくれるのがオルストフです。
閉じた空間に穴をあけて逃がしてくれました。
自棄になって全てを滅ぼそうとするナドラガに明確に反逆しているシーンですね。
オルストフはナドラガに取り込まれてからも周りの様子を見たり聞いたりできていたのではないでしょうか。
子供だと思っていたエステラから『神に縋るのをやめて自分の足で歩き出す』という決意を聞いたということになります。
オルストフは数千年にわたり竜族が神や解放者に縋ってばかりで自立しないという失望に苛まれてきましたが、ようやく希望を見つけた形になりますね。
この時、エステラに『竜族を見守っていてください』と言われて満足げに微笑むのも可愛いですね。
数千年に渡って独立しなかった子供が、ようやく独り立ちする場面を見せられて、こんなの聞かされれば喜ばないはずがありません。
ナドラガにとっては最悪な終わり方ですが、オルストフにとっては内に秘めていた望みがかなった形でバージョン3が終わるわけです。
ナドラガ教団の地下に拷問部屋を作ったり、悪い事もいっぱいやっているので良い人だったとは言えません。
しかし、オルストフが竜族の神なら、竜族と6種族は仲違いせずに昔からずっとアストルティアの仲間だったかもしれませんね。