あなたをこえたくて

あなたをこえたくて

あなたを超えたくて頑張るドワーフ

あなたをこえたくて

デスピサロから学ぶPS版DQ4のテーマ

こんばんは、イコッサです。

前回の記事では悲劇の悪役がなぜ登場するのかを考え、その代表例としてDQ4デスピサロを取り上げましたね。

しかし記事に間違いがありました。今は修正されています。

f:id:ikossa:20200107184043p:plain

私はピサロが人間を根絶やしにしたがる動機を『魔族の王の使命だから』と書きましたが、間違っていました。

どうやら悲劇の悪役フィルターを外そうとするあまり・・・『逆』悪役フィルターが掛かっていたようです。

フィルターを無理やり取り除こうとする者もまた、別のフィルターごしに見てしまうものなのだ・・・。

f:id:ikossa:20200430201821j:plain

って似たような事ニーチェが言ってた。

変な言い訳してすいません!普通に間違ってました!!

でもピサロの悲劇は恋人ロザリーの死なので、動機の部分はあんまり深く考えないでね?

f:id:ikossa:20191124170613p:plain

・・・。

というワケにもいかないので、ピサロというキャラクターをもう一度見つめ直してみました。

すると、彼を通してドラクエ4という作品に対して自分なりの感想が生まれましたので、書いていきます。

 

時系列がわかりにくいDQ4

ドラクエ4は全5章(PS版は6章)に分かれていて、やや時系列がわかりにくいです。

しかし、確実なものがいくつかあります。

  1. ピサロロザリーヒルに住んでいた魔族だった
  2. ロザリーヒルに人間から追われたエルフが逃げてくる
  3. エルフはロザリーと名付けられ、ピサロの恋人になる
  4. ピサロは人間を根絶やしにすることを決意する
  5. ピサロデスピサロと名乗り魔族のリーダーになる
  6. デスピサロ達は勇者の誕生を防ぐために人間の子供を殺害し始める(第1章)
  7. 主人公の村が滅ぼされる(第5章)
  8. ロザリーが(エビルプリーストの計画で)人間に殺害される
  9. 激昂したデスピサロは進化の秘法を使う

こういう流れです。

ピサロが人間を根絶やしにする決意をしたのは一章より前の事で、恋人ロザリーが安全に過ごせる世界にしたいという考えがあったのは間違いありません。

ピサロ自体は最後まで動機を言わないので、推測といえば推測です

一方で、ロザリーヒルのシスターは『ピサロは世界を支配するというとんでもない野望をいだいて出ていったが、ロザリーにだけは笑顔をみせた』と言っています。

デスピサロは地獄の帝王エスタークを王として迎え入れるつもりなので、魔族の王としての名誉や立場にはあまりこだわっていません。

エスタークの下に付く(ナンバー2に降格する)ことを良しとしているわけです。

f:id:ikossa:20191013103415p:plain

PS版でも『ロザリーと一緒にロザリーヒルで静かに暮らしたい』みたいなことを言いますし、彼に世界征服は似合わない気がしますよね。

これは人間を滅ぼすために魔族の王になった(もしくはなる予定)のデスピサロは、世界征服という野望を掲げないと部下のモンスターに示しがつかず、野心的な姿勢を取っていたためだと考えられます。

いくらピサロに人望があったとはいえ『恋人の身の安全のために人間を滅ぼすから従ってほしい』なんて言ったら部下は怒ってしまいますからね。

f:id:ikossa:20200430212234p:plain

そして実際にピサロの恋人優先で魔族の王として未熟な所を直すために荒療治を取ったのがファミコン版のエビルプリーストです。

PS版だと、野心家が下剋上しただけになっていますが、私はファミコン版の方の動機が好きです。

 

ピサロはいつ魔族の王になったの?

1章よりも以前に、ロザリーに人間根絶の野望を語るときはまだ『ピサロ』という表記でした。

そして2章でアリーナたちが出場した武術大会には『デスピサロ』の名前で参加していますので、少なくとも2章より前なのは確実です。

f:id:ikossa:20200430222002p:plain

1章の段階で部下を使って人間の子供を殺害して回っているので、1章より前に魔族の王デスピサロになっていたと考えるのが自然ですね。

ロザリーヒルを飛び出したばかりの魔族の青年がすぐに魔族の王になれるわけもないので、元々魔族のリーダー的な立ち位置にいたのかもしれません。

PS版で仲間に入る時も低レベルなのにすごく強いので、魔族の中でも優秀な血筋だったと言えそうです。

 

ピサロは悲劇の悪役か

前回の記事では『ピサロは悲劇の悪役ではない』と書きました。

確かに虐げられるエルフやマイノリティを救うために人間を滅ぼそうとしている・・・と書くと、彼にも正義がありそうです。

でもデスピサロの悲劇は恋人ロザリーを人間に殺されてしまう所に集約されていますが、これは部下のエビルプリーストの陰謀なんですね。

肝心の『悲劇』がモンスター同士の内輪もめなので悲劇ポイントが低い

しかし、忘れてはいけないのはエニックスの宣伝です。

ピサロファミコン版で既に仲間になる予定でしたが、容量の都合でカットされたそうです。

ロザリーを殺した首謀者を人間ではなくエビルプリーストに設定したのも、ピサロが仲間になった場合に倒す相手が必要だったためだと思いますね。

f:id:ikossa:20190615091957p:plain

実際PS版だとそうなっていますし『ピサロvsエビルプリースト』の構図をわかりやすくするために、ロザリー殺害の動機が変わっています。

もしファミコン版の『ピサロを魔族の王として成長させる』という目的で動いていた忠臣エビルプリーストだったらPS版6章がオカシナ展開になります。

まともな忠臣は上司の恋人を殺したりしない気がしますが、それはエビルプリースト流の忠義の尽くし方だったと思ってください。

f:id:ikossa:20191016231418j:plain

もしエビルプリーストの性格や設定がファミコン版のままでPS版6章のストーリーをやると、彼が進化の秘法を使う動機が変わってきます。

ピサロが進化の秘法で魔族の王として覚醒してほしかった』エビルプリーストが自分自身に進化の秘法を使うからには動機が必要ですね。

ファミコン版だと最後までデスピサロ『様』と言っている

忠臣だったエビルプリーストが5章終了後~6章の間に、何らかの理由でピサロを見限りったことになりますね。

そして『幹部で唯一生き残った自分が王になるしかない』と決意して進化の秘法を使うという話になってしまいます。

これってピサロ的にはあんまり格好良くないですよね

確かにエビルプリーストが過激すぎたのが1番悪いんですが、ピサロは魔族の王として失格だと忠臣に認定されてしまった・・・という歴史が残るのはマズいです。

f:id:ikossa:20191207093213p:plain

これからピサロを悲劇の悪役の美形キャラクターとして売り出したいエニックスとしては、彼のイメージに傷をつけたくありません。

上手くストーリーを作ってピサロに『お前にそんな行動をさせてしまった俺にも責任がある』とか言わせれば、彼のカリスマも上がりそうです。

しかし、子供もプレイするドラクエで難しいやり取りから人間関係を理解しろと求めるのはNGでしょう。

f:id:ikossa:20191209210921p:plain

そうなると、PS版のようにエビルプリーストを野心家の悪いヤツにしておくのがベストだったと思います。

性格はファミコン版よりも小物っぽくなっており、みんなに憎まれて倒される系のテンプレキャラと言った感じに仕上がっていました。

ロザリーを殺したから自業自得なんですが、過激な忠臣キャラという設定を無かったことにされたエビプリも悲劇に見舞われているような気もしますね。

f:id:ikossa:20200501185419p:plain

ところでピサロはよく美形と言われますが、ファミコン版のピサロは美形キャラではなかったそうです。

口調も古風で美形には似合わないものでした。

中世ヨーロッパ貴族風の美形が『ひきあげじゃあ!』とは言わない

ツイッターで頂いた情報によると、ピサロの美形化&悲劇の悪役面の演出強化は発売して数年後に始まったようです。

ファミコン版発売(1990)から3年後のCDシアター(1993)の時代では既に美形の悲劇の悪役キャラになっていたそうですね。

f:id:ikossa:20200301131113j:plain

さすがエニックス!目のつけ処がイイ!

生みの親のエニックスが彼を美形で悲劇の悪役という立ち位置にしたがっているんだから、ピサロは悲劇の悪役で問題ないのだ!

 

なぜPS版6章でピサロは救われたのか

ドラクエ4のプレーヤーで一番意見が割れるのは、やはりPS版で主人公がロザリーを生き返らせて、ピサロが幸せになったことだと思います。

もし主人公に失ったものが無ければこれで良かったと思いますが、自分の村とシンシアを放置して、それを奪ったピサロを先に救済するというのが、あまりに聖人すぎてプレーヤーに違和感を抱かせました。

その違和感はピサロ目当ての客に売るためにPS版6章が作られ、主人公に感情移入しているプレーヤーを無視しているという考えに繋がっていきます。

f:id:ikossa:20200322184721j:plain

この考えも間違っていないと思います。

多分あってます

ですが、ピサロの人生を見直したらPS版DQ4の6章にはもう一つのテーマがあると思いました。

それはDQ4の物語の憎しみの連鎖を断ち切るために、誰かが復讐を止めて拳を下ろさなくてはいけないということです。

f:id:ikossa:20200315225441p:plain

ピサロにはこれができませんでした。

人間に虐げられたロザリーを救うためと言いながら、まだ無垢な人間の子供を殺害して回っています。

この時点でピサロは罪のないロザリーを虐げた人間と同じことをやっているので、同じランクに落ちたと言っていいと思います。

f:id:ikossa:20200430220246j:plain

復讐をする者ばかりになると、世界の知的生命体のランクはどんどん下がっていってしまいます。

この復讐の連鎖を止めるためには、復讐を逆回転させて復讐すべき相手を助けるか、許すしかないというメッセージだったんじゃないでしょうか?

f:id:ikossa:20200430221236p:plain

主人公がピサロを許すことで、ピサロは無抵抗の相手を虐殺するようなランクから抜けだせました。

だったらピサロエビルプリーストを許してやれって?人間を根絶やしにするのやめただけでも進歩です!!

敵を倒すだけじゃなくて時には救ってやらないと、世界は平和にならないんだよ・・・というのが6章のテーマだと思います。

f:id:ikossa:20200322192007p:plain

PS版6章に納得がいかない気持ちはゲーム内の主人公も持っているかもしれませんが、私情を捨てて平和のための行動をとったのかもしれません。

納得がいかない気持ちを飲み込むところまで含めて、DQ4の勇者を体験してほしいというメッセージかもしれませんね!

勇者ってつらいですね。ピサロのように復讐に狂ってしまったほうが楽な生き方だと思います。

私が主人公だったら絶対シンシア生き返らせますけどね

実際は売上優先でストーリーにしわ寄せが来てるだけだぞ!

でも今みたいに妄想していると、納得いかなかった部分もきれいに収まってスッキリするのです。