こんばんは、イコッサです。
悲劇の悪役というものをご存じでしょうか?
例え悪役であっても『同情すべき過去』があったり『悪を成す理由に説得力がある』キャラクターが該当する役割です。
確かにイケメンでいかにも悲劇の悪役にふさわしいように感じます。
しかし、ここであえて言います。
客観的に見るとピサロは悲劇の悪役ではない
物語の順を追っていきましょう。
ピサロの物語
ピサロは最初から人間を根絶やしにするために行動していました。
そして主人公の村を襲い、幼馴染のシンシアを殺害します。
その後、色々あって勇者の戦力も整った頃、ピサロが大事にしていたエルフの女性ロザリーが人間に殺されてしまいます。
ここでピサロは元々持っていた人間への憎悪を爆発させ、進化の秘宝を使いデスピサロに進化するのです。
確かに恋人ロザリーを人間に殺され、復讐に燃えるというのは悲劇の悪役として十分な資格がありそうですね。
しかし、実はこの人間はピサロの部下であるエビルプリーストの回し者であり、実態は部下を管理できずに恋人を殺されたという事になります。
なお、エビルプリーストの動機は原作とリメイク版で異なりますが、ロザリー殺害の首謀者がピサロの部下だったという事実は変わりません。
こうなると話がだいぶ変わってきます。
DQ4の世界でエルフは宝石の涙を流すという設定があり、欲深い人間に狙われていました。
しかし、ピサロが『人間は全て欲深いもの』だと考えて、エルフや他の異種族のために人間根絶に動き出した・・・という動機を語る場面はありません。
元々魔族のリーダーだったピサロが、リーダーとしての使命と恋人ロザリーを守りたいという思いが重なったため、行動を起こしたと私は考えています。
冷静に見ると、ピサロの悲劇はロザリーにうつつを抜かしていたことを部下に咎められて起こった事・・・と言ってしまえるのです。
この場合、彼は悲劇の悪役でしょうか?
もちろん人間の手で悲劇が起きたのですが、だいぶ悲劇ポイントが低い気がします。
それでもピサロは悲劇の悪役だった
1度ピサロが悲劇の悪役と認定されると、その認定は覆りません。
最も不思議なことはDQファンの記憶すらおかしくなることです。
実際は以下のような時系列です
しかし、ピサロ = 悲劇の悪役となった場合、時系列が以下のように逆転します。
後者の展開だと、確かにピサロが悲劇の悪役だと認識しやすいストーリーになります。
この記憶の改変はどうして起こってしまうのでしょうか?
また、ピサロの恋人ロザリーが最後まで『人間を滅ぼすのはやめて』とピサロに言っていたことも記憶から消滅することが多いです。
悲劇の悪役フィルターの存在
この現象を、仮に『悲劇の悪役フィルター』と呼びましょう。
フィルターを通すことで実際の出来事を、悲劇の悪役にマッチングする形で改竄してしまうのです。
キャラクターが実際に悲劇の悪役かどうかは重要ではなく、悲劇の悪役に認定したキャラクターに悲劇っぽい『パーツ』をどんどんくっつけていく事になります。重量オーバーです。
目的と手段が逆転するわけですね。
いつのまにやら悲劇の悪役にふさわしいストーリーに記憶が書き換わってしまうわけです。
この『悲劇の悪役フィルター』は今に始まったことでは無く、古くは源義経や明智光秀にまで遡ります。
例えば源義経は兄である源頼朝の政策を理解せず、貴族になりたがったことが討伐された原因でした。
武士が武士のまま力を持たなくてはいけないという兄の考えを理解できず、貴族に憧れた(武士の地位向上を考えなかった)のが仲違いの原因だったワケですね。
という説がある
明智光秀も今でこそ改革者信長を裏切った悪いヤツと言われることもある身です。
しかし、江戸時代の芝居では『負けの美学』が盛り込まれた悲劇の主人公として人気だったらしいです。
私達が『悲劇の悪役を好む』という傾向はずっとずっと昔から変わらず存在しているんですね。
だから本当に悲劇の悪役だったのか?・・・なんて考える方が無粋なわけです。
だって悲劇の悪役がいてほしいんだもん!
そして忘れてはいけないのは、悲劇の悪役は売れる(商業的価値がある)ということです。
この説明文だとピサロ = 悲劇の悪役で、人間が100%悪いように読めますね。その方が売れるからです。
公式の『ピサロを悲劇の悪役で売って金儲けがしたい』という熱意を肌で感じていただけましたでしょうか?
今も昔も不自然なごり押しは『金になるからやっていること』と考えて間違いありません。
実体を伴わない悲劇の悪役が出現する理由がわかってきた気がしますね。
悲劇の悪役のストーリーに浸りたい私達と、悲劇の悪役で金儲けがしたい相手でWin-Winの関係が成立するというわけです。
ただしイケメンに限る
勘違いしてはいけないのは『悲劇の悪役フィルター』が全てのキャラクターに当てはまるわけではないという事です。
悲劇の悪役なんて物語に星の数ほど転がっています。
しかし、実は悲劇の悪役ではないのに、悲劇の悪役として有名になるキャラには共通点があります。
それは美男美女であること
源義経や明智光秀の時点で予測していた人もいるかもしれませんが、結局私達が望んでいるのは『美男美女の悲劇的なストーリー』だったということです。
実際の義経は不細工だったという説もありますが、実際にどうだったかというのは重要ではありません。
それにドラクエのような創作物の場合、こういう役には美男美女があてがわれるので心配無用です。
もう一度言う、ただしイケメンに限る
だからガテリア皇国の王子ビャンダオはどうがんばっても悲劇の主人公になれないし、クオードはどんな非道をやっても悲劇の悪役と認定されます。
本当はこの記事でDQ10の悲劇の悪役と思われるクオードに繋げたかったのですが、既にかなり長いので次回に続きます!!