こんばんは、イコッサです。
今回の記事はバージョン4のストーリーの核心を含んでいます。未プレイでネタバレ嫌いな人は申し訳ありませんが、読まないことをお勧めします。
前回は割と軽い気持ちでクオードが殺害した人数だけを数えて彼をアストルティア史上で最大級の罪人としました。
しかし、思った以上にクオードの同情的な思いを持つ冒険者が多いです。公式のストーリーの感想を書くページでも彼が救われること、助かることを望んでいる冒険者がとても多い。
私としても同じ様な気持ちはあるので、今回は彼の特集としました。
クオードはガテリアを滅ぼした罪人なのか、エテーネを救った英雄なのか、救われるべきなのか、許されないのか、最初から言っておきますが、答えなんか出せません。
彼に関する複雑な感情を整理するためにはたくさんの情報があったほうが良いと思い、この記事を書くことにしました。
クオードの人格が作られた要因
クオードが同情されやすい理由として、彼がバージョン4.0で高潔な青年として描かれたからだと思います。
4.4での大人時代に罪を犯しつつもそれに苦しむ様子から同情してしまうという人もいるでしょうが、それは『あの高潔なクオードが罪を犯すのだから、その自責の念は大大きいだろう』という青年時代の彼のイメージを元にしていると考えます。
その高潔な性格がどうやって作られたのか、私は以下のように整理しました。
クオードの人生を振り返ると上で紹介している『彼の人格を作った3つの要因』が見えてきます。
クオードはエテーネ王ドミネウスの長男として生まれました。
ドミネウスは弟パドレに比べて時渡りの力が弱く、コンプレックスの塊です。
その彼がコンプレックスを解消するためには偉大な王として歴史に名を残さなくてはいけません。
そのためドミネウスは王の仕事を優先し、クオードとメレアーデは育児放棄した父に代わり叔父のパドレ夫婦に育てられました。メレアーデへの執着はここから来ていると思われます。
ただ父親を毛嫌いしていたワケでもないようで、次期エテーネ王としての自覚はあったようです。
後に父ドミネウスに『王としては失格だ』と言ったように、クオードがエテーネ王とはどのような人物でなくてはいけないのか・・・と考えていたことが伺えます。
彼が周りの問題を手早く・時には自分自身で解決してしまうのも、彼が理想としている王としての姿なのかもしれません。
ドミネウス邸のエレベーターが故障した際は、修理業者が来る前に自分で直してしまったそうです。
王級に引きこもっていたドミネウスに反発して、積極的に国民の役に立つ行動をするようになったのかもしれないね
クオード自身もドミネウスと同様に時渡りの力が弱く、生まれつき持った才能がない分『大変な努力家』になりました。
また、時渡りの才能が無いという一点で冷遇されたことの反発か、他人の才能を評価する能力に優れ、ディアンジやザグレフといった一見頼りない人物の才能を見抜くことができました。
彼には才能を評価した人物に対しては信頼して、大事な仕事を任せるという面もあります。
自分で何でもやってしまう一方で『自分よりもあいつがやった方が上手くいくだろう』と判断したときは、他人を頼れるわけですね。
青年時代のクオードはこのように、やや不遇な境遇ながらも腐ることなく、エテーネ国民に好かれる王子となっていました。
私達冒険者はこの時代の青年クオードの姿を見ているので、後の時代の大人クオードの虐殺を知っても、同情的に見てしまうのかもしれません。
長所が全て裏目に出た大人時代
ウルベア地下帝国時代の大人クオードですが、皇帝ジャクバに使えるまでは彼の長所を生かして出世街道に乗っていました。
しかし、権力を握った後には長所が全て悪い方向に発揮されてしまい、あのようになってしまったんだと思います。
順を追って説明しますが、姉メレアーデと離れ離れになったことが彼の精神を不安定にさせていたことは間違いありません。
そして次期エテーネ王という生まれのせいか、エテーネ王国のためには他国は全て犠牲にしてもやむを得ないという、父ドミネウスと同じような発想にいきついてしまいました。
決断が早く行動的という長所も、裏を返せば長く待てないという事です。
ウルベア時代では10年かかってエテーネルキューブ開発まで漕ぎつけたようですが、最終的に元の時代に戻れればいいなら、20年後、30年後でもよかったのではないでしょうか?
もうメレアーデと離れているストレスが限界だったのかな?
とにかく急いで元の時代に戻ろうとして手段を択ばず選択したのが皇帝ジャクバの暗殺なのですから、長所も行き過ぎれば短所になるというのがわかりますね。
しかも、才能は見抜けても野心は見抜けないのか、信頼してはいけない部下に大量破壊兵器の扱いを一任してしまいましたね。
ウルベア地下帝国の開発部は自分達の才能を生かす場をくれるクオードと目的が一致していただけで、クオードに忠誠を誓っているわけでもなく、彼の望み通りには動かない
こうして彼の長所が全て悪い方向に作用した結果、あのような悲劇が起きたと考えます。
クオードとドミネウスは同じ?
よく言われるのが、クオードも結局はドミネウスと同じような人間だという事です。これは本当にそうなんでしょうか?
クオードの見せ場ですが、父ドミネウスを断罪する場面があります。
『エテーネ王国そのものが滅びるのを防ぐために、少数のエテーネ人を犠牲にしてもかまわない』とする父に彼は怒ります。
ここで彼のことが好きになった冒険者も多いのではないでしょうか。
私もその1人です。
大勢を助けるために少数を犠牲にするやり方には、たとえ相手が父でも許さないという姿勢は本当に素晴らしいですよね。
ここでクオードがこのような姿勢を見せてくれたから、彼は信頼できる人間なんだと冒険者に思わせてくれます。
ただ・・・この場面ってドミネウスの視点だとエテーネ王国が実際に滅ぶ未来が時見によって見えてしまっていて、一方のクオードは何も知りません。
エテーネ王国が地盤沈下で滅ぶということを知った後の時代の大人クオードが、この時のドミネウスと全く同じ状況になった言えます。
残念なことに全く同じ状況に立った時、クオード・ドミネウス親子は全く同じ行動を取ります。やはり親子です。
参考までに、悪事を非難されたときの親子の怒り方を連続してみてみましょう。
まるで阿吽の呼吸のように、全く同じことを主張する親子です。
クオード・ドミネウス親子は追及されると『お前に王家を継ぐもの責任などわかるまい』『自分にはどんな犠牲を払ってでもエテーネ王国を繁栄させる義務がある』という絶対会話が不成立になるタイプの悪役の主張を使ってきます。
根っこの部分は一緒なんだろうな
さっきからドミネウスついてあまり触れていませんが、ドミネウス自身もかなり不幸な生い立ちです。
最初の妻は時の指針書の指示で自殺、次の妻も短命で死に別れると、愛するものを2回も失っています。
最初の妻は身分の低い女性だったので、ドミネウスの父が時の指針書に細工して自殺に追い込んだのではないかと疑ったことがあります。
ドミネウスにもクオードみたいに燃えている時期があったんだよ!
しかし、王にも時見の結果を都合よく変えることはできないという事を知り絶望。
妻の死を回避したくて、もっと広範囲の時見がしたいのに才能のないドミネウスはそれもできません。これがドミネウスを時見絶対主義に変えてしまった要因かもしれませんね。
そして強い時渡りの力があるのに使おうとしないパドレに苛立つ理由もここにあります。『パドレのような力があれば妻が救えたかもしれないのに、パドレ自身はその力を軽視している』から許せないのでしょう。
こう見るとエテーネ王国のためには何でもするという姿勢こそ一緒ですが、そこに至った生い立ちもどことなく似ていますね。
ただドミネウスは病魔が蔓延する海洋都市リンジャハルにパドレを送り込んだり、嫉妬の部分が強すぎる気がします。
ドミネウスとクオードは主義主張がそっくり。余裕がなくなるとコミュニケーションを拒否して、王家の責任を出してきて、お前に俺の苦しみはわからないだろう・・・みたいな事を言い出すところまで一緒。
クオードが立てた計画とは
バージョン4.4では後の時代で悪鬼、モンスターとまで言われるほどの悪行を行ったクオードですが、彼だってすべてが計算の上だったわけではありません。
ここで彼の計画がどのようにズレていったのか考えてみましょう。
まず帝国技術庁の彼の部屋にある日誌からですが、元々ウルベア地下帝国の皇帝ジャクバを暗殺する予定は無いようでした。
しかし、ウルベア地下帝国とガテリア皇国の戦争継続のための軍事費の増額を皇帝に進言するつもりであり、戦争により両国の兵士が死ぬことは仕方ないと思っていたようです。
外交による平和が理想だと理解しつつも、自分の目的のためにはウルベア地下帝国が優勢のままガテリアに勝利してほしい。
そのために多くの兵士が死ぬが、この戦争はドワーフ同士で始めたことだし、自分の責任ではないと考えたのでしょうか。
しかし、皇帝ジャクバの外交による平和的な戦争終結プランを知った時から、彼は明らかな加害者に変わっていきます。
イコッサが思うに『ジャクバ暗殺前』と『暗殺後』と『ガテリア皇国滅亡後』で彼の計画は段々と変更されていったはずです。
それを図にしてみました。
こうやってまとめてみると分かるのですが『ジャクバ暗殺前の段階で』ドワチャッカ大陸の地脈エネルギーをエテーネ島に注ぎ込むというプランは立てられているのです。
なんだよ。最初からクオード悪人じゃん!
そう思われそうですが、エテーネ島とドワチャッカ大陸では規模が全然違います。
ウルベア地下帝国の発展をみて『多少の地脈エネルギーをいただいてもドワチャッカ大陸が沈むことはない』と思ったのかもしれません。
しかし、ジャクバ暗殺以降の彼の行動は『ドワーフの命よりもエテーネ人の命が重要だ』という考えがハッキリと透けて見えますね。ドミネウスそっくりです。
ですが、あそこまで彼が狂った原因は、ウルベア大魔神がガテリア皇国を焼き払い、非戦闘員を含む国民大多数を殺してしまったからだと思います。
これはクオードの責任ではないという考えもありますし、ウルベア大魔神の扱いを一任した以上は任命責任があるとも言えます。
自己の利益のために人の命を奪う人種もいるという事を、クオードは見抜けなかったようです。
クオード自身が既に目的のためには殺人も犯す人種なのに、他人の野心は見抜けない。これも人を信頼して任せる長所と、考えが浅い短所のせいか・・・
その後の暴走は日記に書かれている通り『ここまで犠牲を出したからには、もう止まれない』という事なんでしょうね。
クオードの罪を許したメレアーデ
再びエテーネ王国に戻ってきたクオードですが、ウルベア地下帝国時代の悪行をメレアーデに責められます。
その時メレアーデが出したクオードを許す条件がコレです。
この国(エテーネ王国)に生きる全ての人達の未来を守り抜いた時、クオードはメレアーデに赦される。
※ここでの赦すとは、罪のを赦すという特別な意味を込めて使っている感じ
プレイした当時はこれでクオードは贖罪できたと思っていたんですが、見直すとおかしくないですか?
皇帝ジャクバを殺し、ウルベア皇国を滅ぼし、ドワチャッカ大陸の砂漠化を早めた罪を、エテーネ王国を救うことで許しますと言っているんですね。
エテーネ王国を救うのはクオードにとって当初の目的です。その目的を果たせば今まで犯した罪、全部チャラです。
何故メレアーデはここまでクオードにとって都合のいい条件を付けたのでしょうか?
まずクオードの罪を裁くような法律がエテーネには無いと思われます。遥か未来の国家を滅ぼした罪人なんて彼が初めてでしょうからね。
次に、ウルベア・ガテリア両国の被害者が不在というのも大きいです。
この場にいるのは罪に問えない罪を犯したクオードと、全くウルベアの出来事と無関係の部外者メレアーデです。
この2人がいるから何か話が進むの?
事件と全く関係のないメレアーデですが、倫理的にクオードのやった事はアウトなので多少はクオードを責めます。
しかし、彼女にとってもウルベアでの出来事なんて別世界の話。実感を伴わないドワーフ達の苦しみより、弟クオードの苦しみの方に心が傾いても誰が彼女を責められるでしょうか。
加害者クオードを慰める加害者の姉メレアーデという形になるのは当然です。テレビの刑事ドラマでも加害者家族は慰めあってますよね。それと同じです。
そんな傷ついたクオードが一番欲しているのがメレアーデからの許しでしょう。
彼は『グルヤンラシュ時代を責めたければ責めろ!』なんて言ってますが、彼の日記や最後の言葉からも『メレアーデだけには見捨てられたくない』と考えているのは明らかです。
メレアーデもウルベアの出来事はいまいち実感が湧かないので、苦しんでいるクオードを助けたいという思いがあったと考えます。
『許しを与えてクオードの罪悪感を軽くしたい』という考えが先にあり、出てきた落としどころがエテーネ王国を救う事だったのかな
最近まで王女として何不自由ない生活を送り、貧困にも程遠い民しか見たことがないんです。そんなメレアーデに、見てもいないドワーフ難民の苦しみなんて想像すらできません。
そもそもクオードを断罪するような動機や資格も、罪を許す権利も無い部外者のメレアーデが『クオードを赦す』と言ったら許される・・・そんなワケがないですよね。
メレアーデの赦し = クオードへの優しさ
既に裁かれていたクオード
簡易的ではありますが、ウルベア地下帝国にてクオードは既に裁かれています。
ウルタ皇女が直々に処刑を行ったことで(結果的には生き延びましたが)クオードの罪はこれ以上問えないはずです。
これまで長々と彼の罪がどのような流れで行われたのかを書いてきましたが、正式な場で彼の罪が暴かれた後で外野がうるさく責めるのは蛇足なのかもしれません。
でも考察はするけどね
クオードの罪が歴史から消えた理由
不思議なことに後の世にクオードの悪行は一切残りませんでした。
政治的にクオードが罪人だと困るからでしょうか。
まずエテーネ王国ですが、機械獣の襲撃や隕石の落下という出来事が起きたばかりです。
王のいるエテーネ王宮も無くなり、時見すらも捨てて新しい体制を築こうとしている中で『英雄クオードが実は別の国を滅亡させて滅茶苦茶恨まれています』なんて情報を出せるわけが無いんです。
しかも、現リーダーのメレアーデの弟という立場ですからね。絶対に隠さなくてはいけない情報です。
そもそも別の時代の話です。黙っていれば絶対に誰にもばれないし、被害者に責められる可能性もゼロです。嘘がバレる恐怖も感じなくていいのです。
一方で、クオードの罪を正式な場で暴き、王家によるお触れまで出されたウルベア地下帝国ですらクオードは人間に化けたモンスターとして後の世に伝わっていきました。
『人間クオードの悪行』はというものは『モンスターのグルランヤシュ』の悪行となったのです。
この情報操作を行っているのはウルタ皇女や政治家ではなく、国民でした。
ウルベア帝国民は事が発覚するまでクオードを持ち上げていたので、自分の罪から逃げる都合のいい言い訳として『クオード = モンスター』という説をでっち上げたのです。
人間クオードではなく、グルランヤシュというモンスターの策略に乗せられた被害者であるという点をを強調すればウルベア民の罪の意識は軽くなりそうです。
また、この説を積極的に流していかないと、滅ぼしてしまったガテリア難民の怒りがウルベア民に向いてしまいます。
クオード直筆の日記や、暗殺の映像すらあるのに真実が残らないというのは不思議ですね。それだけウルベアの国民は腐ってしまっていたんでしょう。
でも、それによってエテーネ王国の醜聞が伝わらなかったのですからエテーネ人には幸いしました。
まとめ
エテーネ王国とウルベア地下帝国の両国でクオードの罪は無かったことになりました。
『クオードの罪が許されるべきか』なんて考える以前の問題です。彼の罪はウルベア地下帝国の時代に裁かれ、その後の歴史からは消えてしまったのです。
もう裁かれちゃってるんだから、それでいいじゃん?
しかし、彼の最大の被害者のガテリア皇国の難民は、彼の虐殺は『エテーネ王国を救うためにやった』という事までは知らないのです。
被害者が一番詳しく情報を知るべきだと思うけどね
確かにクオードの罪は裁かれたのですが、それでガテリア難民は納得するでしょうか。
絶対に無理ですね。一方的に家族を奪われた人はどうやっても救われません。
せめて、あの凶行が後の世に繰り返されないことが犠牲者に報いるという事なんじゃないでしょうか。
この問題はクオードだけの話ではなく、過ちを犯した歴史にどう向き合うかという問題だという気がします。
この教訓が生かさなれかったら、本当にガテリアは無駄死にだよ
ウルベアでは隠蔽され向き合えなかった歴史ですが、現在にタイムスリップしたエテーネ王国ではどうでしょうか?
数十年後、エテーネ王国の情勢が安定してからでもいいので、メレアーデがクオードの罪まで含めた彼の人生を公表し伝えていく事ができるでしょうか。
クオードの思いだけじゃなくて、彼の功績も、罪も、人生そのものを全部伝えてね。
アストルティアでは特にリーダー的な地位の人が自分の種族のために他人を犠牲にするという場面が多いですからね。
その最大級の事例として、悲劇が繰り返されないためにクオードの罪についてアストルティアの住民が真面目に考えることができれば、滅んだガテリアも報われる気がします。
あ、これはむりっぽい